《MUMEI》 晴二十歳で死ぬと思ってました。いや、いつでもいいから早く死にたいと思っていました。小学校五年の一学期から学校に行くのをやめました。つまらなくなったのです。生きることにも同じことを感じていました。 つまらない、つまらない。 タバコも覚えました。クラクラするのが気持ち良くて、気が付けば親のお金を盗んでタバコばっかり吸ってました。でも何も変わりません。 つまらない、つまらない。 ある日、風呂場で左手首を切りました。小さい傷を三つ作っただけでした。血だらけの風呂場を見て、怖くなって泣きました。手首の傷を見て、気持ち悪くなって吐きました。仕事から帰って来た姉ちゃんに見つかって二人で血だらけの風呂場を洗い流しました。そして近くのスポーツ用品店で紺色の安いリストバンドを買ってもらいました。姉ちゃんは泣いていました。怒らずに、ひかずに、謝っていました。私もたくさん泣いてたくさん謝りました。 姉ちゃん。私は今あの時の姉ちゃんと同じ歳になりました。タバコはやめました。死にたいと、生きることにつまらないと思うこともやめました。リストバンドで傷を隠すこともやめました。姉ちゃん。もうすぐ子供が生まれます。男の子でも、女の子でも姉ちゃんと同じ名前をつけます。千晴と。夫も喜んで賛成してくれています。とても優しい人です。 ありがと姉ちゃん。ありがと姉ちゃん。ありがと姉ちゃん。 一緒に死んであげるって言ってくれたのに、私だけ死ねなくてごめんなさい。そばで見た姉ちゃんの死に顔忘れません。許してください。優しい姉ちゃん。 千晴姉ちゃん。 前へ |次へ |
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