《MUMEI》
fin
藍沢組の事務所の場所は、なんとなくわかっていた。
原付バイクにまたがって、エンジンを始動する。
「無駄な感情は捨てろ。殺せ」
自分に言い聞かせる。
いつもより雑にバイクは走り出した。
だんだん近づいて来る事務所。
高揚に似た緊張。
建物が視界に入った時には、葵の目は迷いの無い目になっていた。
エンジンを止め、バイクを降りると、事務所に向かう。
早速出て来た男を、一発で絶命させる。
奥に居た男は、葵に向けて、発砲した。
横にかわしてその男を撃つ。
肩に命中した。
同時にリボルバーが、手から離れる。
拾おうとする男に葵が詰め寄ると、男は、葵に突進して来た。
壁に押しつけられ、首を絞められる。
「お前何者だ!」
そう言う男の、無防備な腹に、銃弾を撃ち込む。
「クソガキが…!」
苦し紛れに、葵の腹に、ナイフを刺す。
「ぐっ…」
鋭い痛みが、葵の体を襲う。
男が崩れると、葵もうずくまってしまった。
「まだ、まだ動け。」
ナイフをその場で抜くと、再び立ち上がって、奥に進んでいく。
次々と出てくる組員を、ひたすら撃ちながら、組長を捜す。
いつの間にか、左腕は被弾して、動かなくなっていた。
「組長はどこだ!」
半狂乱で銃弾をバラまく。
葵の歩いた後には、空薬莢が散らばる。
弾倉が空になり、柱の陰で、弾倉を替える。
再び柱の陰から飛び出して、銃弾をバラまく。
もう、何が目的だったのか分からなくなるくらい、人を殺した。
同時に、気持ちが薄れた。
その瞬間、太ももを撃たれて、派手に転倒する。
そこに、銃弾が撃ち込まれる。
徹底的に、確実に死ぬように。
血が飛び散り、体が崩れる。
動かない肉塊になっても、まだ撃ち込まれる。
ボロボロに、粉々に。

組員の奥から、組長が出て来て、姿を変えた葵の前に立つ。
「こんなガキが…殺し屋か。」
悲しいような、怒ったような、複雑な表情をして、事務所の奥に戻って行く。
「早くそいつを処理しろ。まだ若いんだ、せめてきれいな白い骨にしてやれ。」
組長の言葉に、組員は戸惑う。
優しさか見せしめかわからないまま、葵は組員の手によって、本来の一般人同様の死後の処置が取られた。
葵にとって、それは嬉しいのか、悔しいのか。
舞い上がっていく煙は、仁田に届いただろうか。

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