《MUMEI》

口に運ぶフォークが鉛のように重たい。
ゆっくり、落とさないように持ち上げる、口に入れる……


「桜介は何人くらい欲しい?」

お父さんは乙矢や俺に聞いてから神部に聞いた。


「人数は特に。俺よりも兄さんの方が大事だから。」

神部の言い方にいちいちなにか引っ掛かる。


「北条家を背負っていくのだからね、当然か。」

お父さんは納得しているようだが俺にはよく分からない。
何故、神部がそんなに遠慮するのか七生ばかりを気にするのか。


「私も好きな人との子が欲しいです。」

瞳子さんは七生を前にすると大胆になる。
幸せが見える。
瞳子さんなら七生は幸せになれる。


「……っ、」

臍よりも下の下腹部の異物感。
眩暈と息苦しさ。


……まわる。



喉元に苦みがまわる。

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