《MUMEI》
新那
ニーナの話しをする。

彼は御神の城で、城主の長男として生まれた。稲穂のような柔らかな髪と空色の瞳を持つ。

幼少期から学問だ武術だと、跡取りとしての教育を受けながら、それを抜け出しては町へ下りた。町民からは今でも「若様」と可愛がられている。


16になった年、旅に出た。
自分の足で諸国を知るためである。それが彼のかねてからの夢であり、16までは勉学に励むと、父との約束でもあった。

それから5年もの間、ひたすら歩き、金が尽きたら稼ぎながら、多くのものを見た。
そして、広い世界で諸国に惹かれながらも、いずれは御神のため跡を継がねばならぬという思いから、帰路についたのである。


途中で仲間も得た。
いつの間にか行動を共にしていた、切れ長の瞳に赤い髪が印象的な長身の男。
頼蔵である。

御神の地とは比べものにならない巨大な国に滞在していた時、忍という職を知った。ニーナには想像もつかない特殊な技を幾つも持ち、神出鬼没。己の決めた主につく者、給料を貰って依頼をこなす者がいる。頼蔵は前者であった。なぜニーナを選んだのかはわからない。


こうして、現在に至る。

ニーナはなんやかんやと言いながら、己のすべきことを真っ直ぐに受け止めていた。

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