《MUMEI》
ご機嫌な志貴と無口な柊
「スケート久しぶり〜!教えてあげるからね、祐也」

「あ、あぁ…」

「…」


(…?)


スケート場に向かうバスの中


ご機嫌な志貴に対して柊は無言だった。


「そんなにスキーが良かったのか?」

「…うん」


(そんなにスキーが好きなのか…)


すると


「もしかして、柊、未だに、…ダメなの?」


志貴が意外そうに訊いてきた。


「…そうだよ」


柊が、うつむきながら答えた。


そして、バスはスケート場に到着した。


まだ早い時間だったせいか、人は思ったより少なかった。


俺は、志貴のすすめで、歩きやすいフィギュアスケート靴を借りた。


志貴は、スピードスケートも得意らしいが、俺に合わせてフィギュアスケート靴を借りていた。


「柊…見学する?」


控え目に、志貴が柊に質問した。


「…いや!」


柊は気合いを入れ、俺達と同じ種類の靴を借りた。


「格好だけなら、四回転飛べそうなんだけどなあ…」


椅子に座ってスケート靴を履く柊を見ながら、志貴は呟いた。


そして、俺達は、氷のリンクに向かって普通に歩き始めた。

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