《MUMEI》

「どうかしたかい‥?」

「‥別に、何となく‥」

珠季は

気を紛らわせようとしているのか──

珠季は

教科書のページをパラパラと捲っている。

けれど

飽きたのか──

今度はシャープペンシルを回し始めた。

「───────」

いつも思うんだけど‥

──よくこんな芸当が出来るな‥。

「‥?」

落ちた。

「‥‥‥‥‥‥‥」

珠季は

戸惑っているのか‥

固まってしまっているのか‥

微動だにしない。

僕は屈んで──

シャープペンシルを床から拾い上げた。

緊張気味に‥

彼女に差し出すと。

「‥あんがとな」

ボソッと──

微かに彼女がお礼を言ったのが分かった。

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