《MUMEI》
やはり奪われていた
「無い…無い無い無い無い!」


俺のお気に入りのクマちゃんのぬいぐるみが


無い。


無くなっている。


「まさか…たいせつなものってのは…!」


俺はあまりのショックに発狂した。


「うぁぁぁだだだだっ、わぁぁぁっがぁぁぁ、ぐわぁぁぁ!」


壁を何度も殴り付ける。


何度も、何度も、何度も、何度も!


やがて拳が痺れ、殴るのをやめた。


「俺は…なんてことを…」


たいせつなものを失う


その言葉の意味をもっとよく考えるべきだった。


俺はもう取り返しのつかない状況に陥っていた。


「クマちゃん、クマちゃんっ!」


涙は無限に流れ出る。後悔は後から後から湧いて出る。


自己嫌悪…いや、自業自得だな。


クマちゃんを失った俺は


生ける屍も同然だ。


もう、全てがどうでもよくなった。

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