《MUMEI》

「──えっと‥」





私は、

もう何時間も便箋と向き合っている。





けど‥

一文字も書けていない。





ペンを握ったまま‥

手が震える。





「藍伊ー、いるかー?」

「お兄ちゃん‥?」





何か用なのかな──。





「どうしたの?」

「いんや、別に用って訳じゃないんだけどな? ──ん、手紙書いてたのか?」

「ぁ‥うん。まだ全然書けてないけど──‥、お兄ちゃん‥?」

「まっ‥まさか‥アイツに‥?」

「──うん」

「!?」

「伝えなきゃいけないんだ。──負けたくないから」

「──?」

「先輩はね、すっごくいい人なんだよ──。お兄ちゃんも知ってるでしょ?」

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