《MUMEI》
破壊者
「言っておくが、これはさっきのとは違う」
「色が、だろ?」
痛みを堪え、ユウゴは皮肉っぽく笑った。
草野は一瞬するどくユウゴを睨むと、すぐに馬鹿にしたように肩を竦めた。
「このアーケード、破壊したのは誰だと思う?」
「……あんたが?」
ユキナが言った。
まだ、腹が痛いのか表情が暗い。
草野は嬉しそうに頷いた。
「そうとも、僕が作ったこの改造ダイナマイトで、この商店街を吹っ飛ばしたのさ。見事だろう?」
「なんのために?」
「いただろう?ここに。あのガキ共が」
「ひょっとして高下のこと?」
「さあ、名前は知らない。君たちを囲んでいた連中さ」
それは間違いなく高下たちのことだろう。
「あいつらを狙ったのか」
「そうだよ。あいつらは鬼だろう。僕の敵だ」
「……それだけの理由で、この大惨事か?」
ユウゴは瓦礫の山を指差した。
表面を見ても大惨事だが、その下に広がっているのはまさに地獄絵図のようだ。
草野がその惨状を知る由もないのだが。
いや、彼ならきっとそれを知ってもただ喜ぶだけだろう。
「そうだ。でも少し後悔してるんだ」
「へえ。まだ良心ってものがあるんだ?」
「良心?馬鹿言うな。あいつらが君たちを殺してから爆破すればよかったと思っただけだ」
「なんだと?」
「……まあいい」
草野は一人頷くと、消えたライターの火を再びつけた。
「これで、さよならだ」
草野はゆっくりと導火線へとライターを近づける。
「は、走るぞ」
ユウゴはユキナの腕を引っ張ったが、ユキナ勢い余って転んでしまった。
「おい!」
しかしユキナは起き上がらない。
そうしてる間に、草野はゾッとする笑みを浮かべて導火線に火を点す。
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