《MUMEI》

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"松の字"…兼松が芸妓にうつつを抜かし、花札に興じている頃…



伊豆半島の山間を縫う県道を、4台の黒塗りの高級車が走っていた。



車列は真っ直ぐに紅葉館へと向かって走ってゆく…。



そのうちの1台の車の後部座席の真ん中に、極道者に両脇を抱えられた一人の男が縮み上がっていた。



男の顔面は拷問を受けて痛々しく腫れている。



この男こそ道風会の切札だった。



"松の字"の包囲網は刻々と狭っていた。



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