《MUMEI》

「それって、ゴール?」
ルナは何気無く私の絵を指差した。


ぎくりとした。


「スケッチブックの一枚一枚を見ていくと日がこの絵に近づいてる。」
ルナは片目をつむって何かを測っているようだ。


「別に。」
迷惑そうになづきは眉をひそめた。

「正解だね
しかも自分の作品を説明することを面倒臭いと思っている。」

「よくお分かりで」
勿論、厭味だ。

「理解を示してくれたからね。
捻くれ者だから言葉にしちゃうけど、こういうのはマゼンダみたいにインスピレーションで見るものだと思うよ」


「本物の芸術は論じられる」

「語れない作品が多いからね。
自分はマゼンダにもっと知ってもらいたいから
話したいな。」

「もうお腹いっぱい」
廊下が賑やかになってきた、掃除を終える合図である。なづきは片付け始めた。

「うん、また話したい」
ルナは笑いかけてきた。
どこぞのアイドルピンナップだろうか。




「アンタ、絵の中だと孤独」なづきは深い意味もなくイメージで言った。
筆洗油の臭いが鼻につく。

ルナは背を向けて片付けているなづきに背中を預けた。重い。
「そうだよ
いつも独りで走ってるよ
だから早く追い付いて。
無視はイヤだ。」
心なしか後半が弱々しい。



うん と言ってしまいそうな声帯を堪えるのに、なづきは苦労した。

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