《MUMEI》
みんな承知しているよ、全部アヅサのものだ。
俺はいつもこうしてきた。
独りの睡眠は貴重だ。
願った分だけ体が切り取られていけばいい、
余計な物は消えて惨めな思いしないで済む。
さあ、目を閉じてアラタ。お母さんに悟られないようにするんだ、……夢で会おう。
枕の間に腕を挟めて眠る。
頬を濡らすものはきっと、夜露。
枕の下に振動
携帯だ。
月が雲隠れしたせいなのか急に暗い。
着信を確かめる前に
振り向く。
窓は開いていて、縁に黒いものがあった。
「………待ちくたびれてミイラになっちゃうよ?」
顔に手を触れ、口角が斜めに上がるのを理解する。
メール着信には
[済まない遅れた]
とだけ入っていた。
煉獄とはいつも決まって暗闇で、メールで会話する。
煉獄は俺の横に土足で上がった。
そんなこと気にならない。だって、絶対来ないはずだった。
来てくれたんだ
俺の為?
アヅサの為?
どっちでもいい。
会いに来てくれたから
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