《MUMEI》

ミンミンと蝉がうるさい。焼けるようなアスファルトの道を、六歳の私が走っていく。

手の中には、小さな蝉。
初めて、1人でとった蝉。
早く誰かに見せたくて、一心に走る。
熱くてたまらない。汗が、瞳に流れ込んだ。


手の中の蝉が、動かなくなっていることにも気付かない。
誇らしくてたまらない。
口に、無邪気な笑みがこぼれる。




六歳の私は、ふと立ち止まる。
誰かの、視線を感じた。
ああ、誰でもいい。
この蝉を見て。僕の蝉だ。そして、褒めて。





辺りをくるりと見渡し、人を探す。
そして、横の家の窓に、人影を見つけた。



ねえ、見て。



そこには、白い少女がいた。

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