《MUMEI》 「そっ‥そうだ、この前‥塾の帰りに麻木に会ってね──」 「‥で」 「その‥‥‥嬉しそうだったよ」 「千代はそーゆーヤツだ。あたしに何か嬉しい事があると──一緒に喜んでくれて‥あたしが悩んでると‥一緒に悩んでくれて‥」 「羨ましいな」 「‥?」 「僕にも麻木みたいな友人がいたらな、とね」 「お前も友達探せばいーじゃん」 「残念ながら──僕はなかなか、そういう事は得意じゃなくてね」 「宮上とかは‥?」 「宮上‥?」 宮上というのは‥ あの宮上か‥? 「アイツ、結構いいヤツだぜ」 「そうだね‥、でも──‥」 僕は 彼を敵視していた。 珠季を取られてしまうんじゃないかと 不安で──‥。 彼も 僕と同じく‥ 珠季に好意を寄せていた。 つまり 彼は── 僕にとっては恋敵だったんだ。 前へ |次へ |
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