《MUMEI》
叫び
しかし次の瞬間、悲鳴をあげたのは草野だった。

 草野は額に手を当てて、悲鳴をあげている。
「なんだ?」
横を見ると、座り込んだユキナがいつの間に取り出したのか、エアガンを草野に向けていた。
「あんた、キモいんだよ!」
ユキナはそう叫ぶと、もう何発か弾を発射した。
「ぐあ!や、やめ」
しかし、ユキナは引き金を引くのをやめようとしない。
弾は見事に草野の頭部に命中し続ける。

「ぎゃあ!」
ついに草野の眼鏡に弾が命中し、彼は仰向けに倒れた。
割れた破片が目に入ったらしい。
「おまえ、すげえな」
助け起こしながら、ユウゴはユキナに言った。
「まあね。って、ああ!」
「なんだよ、今度は?」
「火がついてる!!」

ユキナが指差した先には、ジリジリと火花を散らす一本のダイナマイト。
「……嘘だろ?」
悲観的な声をあげながら、ユウゴはどう動くべきか考えた。

ダイナマイトを投げ捨てる?

論外だ。

そんなことしてる間に爆死してしまう。

では、どこかに逃げるか?

どこに?

 さっき草野が言ったことが本当なら、今度の物の威力はさっきよりも何倍かあるのだろう。
走って逃げても間に合いそうにない。

その時、草野が右手でダイナマイトを掴んだ。
「へ、へへへへ。僕、一人じゃ死なない。みんな、みんな巻き添えだ!」
草野は聞き取れないほどの声量で叫ぶと、右手を高々と突き上げた。

その目から赤い涙を流しながら。

導火線はあと僅か。

ユウゴの服の裾をユキナが引っ張った。

「みんな死んじまえ!ヒャハハハハ」

草野の笑い声が響く中、凄まじい閃光と爆発が彼を飲み込んだ。

 反響する爆発音は、まるで草野の最期の叫びのようだった。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫