《MUMEI》

「爪の間この辺?」
画鋲で指の先をつつく。
革の手袋だからそう簡単には傷つかない。
威かしているのか、ふざけているのかは本人にも分からない。


 [目のやり場に困る]

「……マスクとフードとサングラスで顔隠しているくせに。
目を逸らさないで
見てよ、俺のこと」

煉獄の衣服のごわつきが気になる。

彼は明日の着る予定で出されているシャツに手を伸ばした。


結局シャツだけは着る。


「釦閉めろ
気が利かないな」
煉獄は目線を横に逸らして閉めてくれた。


 [もう、眠る時間だ]
布団を掛けてくれた。
その手を両手で持ち上げる。

「いっぱい、こびりついちゃった。」
煉獄が土足で上がったからシーツを捨てなければならない。
目を閉じて拳を噛んだ。
 カリ、という音が鳴る。

大きな手、こんな手が欲しかった。


「寝る前にお話して?
あの指の年齢が聞きたい」



画面が白く光って眩しい。
[自分の貢ぎ物ではない]



「うそ、
 だって誰も何も言ってないよ!」
脳神経がきちんと働かない。強く煉獄の手首を握りしめていた。


―――――誰が送った?
何故名乗り出ないのだろうか?
あんな得体の知れないもの大切にして、俺は馬鹿だ。


いつだって偽物の中で遊んでいた、俺が遊ばれていたんだ。
玩具は自分なのに。

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