《MUMEI》

あの日

僕らは最後の勝負をした。

校舎の1階からスタートして

どちらが先に屋上に着けるかという

単純な勝負だった。

珠季は

途中で足を挫きながらも‥

必死に‥

屋上までやって来たんだ。

彼女は

勝負に負けた事に

ひどく腹を立てていた。

『そりゃアタシはバカだよ! どーしよーもなくバカで単純で! でも‥オマエに勝つって‥勝たなきゃいけねーってずっと思ってんだ‥!』

『待て、君は僕を‥』

『大ッキライだよ!』

『‥‥‥‥‥‥‥』

『だけど‥それと同じ位大好きだ!』

『‥な‥』

『だからオマエを越すんだって‥。オマエを越さなきゃ告れねぇって‥!』

『───────』

何も

考えてなんかいなかった。

僕は無意識に──

彼女を抱き締めていた。

『‥ぇ』

『何処までも馬鹿だな‥君は──』

本当に

僕はそう思った。

けれど──

僕も彼女と同じ位馬鹿なんだ。

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