《MUMEI》

先生は優しい。

ぼくを叩かなかった。

代わりに峯さんが殴られた。

峯さんの新妻も殴られた。


「酷い人だわ!あの淫売が誑かしたのですよ!」

ぼくに峯さんの新妻は食ってかかる。


「私は贔屓するからね!
峯君は私に謝ることがあるだろう?」

先生はぼくに優しい。
当時、気付いていたのだろうか。
峯さんも苦虫を噛んだ顔をしている。



峯さんも秘密がある。
ぼくとの内緒だ。文字を教わるなんて可愛い秘密ではない。

ぼくは共有物で、艶子さんはぼくの身体をたまに使用する。

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