《MUMEI》 愛は会社を救う(98)「お待たせして、ごめんなさい」 午後8時を回って、知子がようやく待ち合わせ場所にやって来た。 そこは以前、由香里と飲んだホテル最上階のラウンジ。あの時と同じカウンター席だった。 知子は制服のベストを脱いだだけの、白いブラウスにグレーのスカートという姿で、隣の席に腰を掛けた。 「山下チーフの具合はいかがでした?」 仁美は午前中に早退していた。 知子は退社後、一度仁美のマンションまで様子を見に行き、それからここにやって来たのだ。 「本気で心配してくださってるのね」 知子は微笑みながら私に言うと、バーテンダーにミモザを頼んだ。 確かに私は昼間から、山下仁美のことをずっと労(いたわ)しく感じていた。 「だから、赤居さんには全部お話ししようと思ってお呼びしたの」 前へ |次へ |
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