《MUMEI》
▽
「ごめんなさいっ!マジでもう!聖ちゃんごめんッ!」
「………」
聖ちゃんはとどめに貰った棒付きキャンディを咥え、右手に風船の糸を持って、無言で俺の前を歩いている。
駅まで、昨日の乗せて貰ったワゴン車でおばさんに送って貰ってる最中も聖ちゃんは無言だった。
窓から景色を見る聖ちゃんの肩にそっと触れたら、キッとひとにらみされて、聖ちゃんは風船の後に貰ったキャンディのセロファンを剥がしだし、無理矢理口に咥え舐めだしたのだ。
横に広がった唇。
横に広がった頬。
笑いそうになったがムカついた表情の聖ちゃんに笑う訳にもいかなく、ぐっと堪えた。
聖ちゃんはいきなり立ち止まり振り返ると、いくらか小さくなったキャンディを口から抜いた。
「馬鹿野郎ッ!」
「…ごめんなさい…」
「ちゃんと言えよ!なんで言ってくんねーんだよ!俺がうっかり言ってばれたらどうしたんだよっ!」
「……ひじり…ちゃん?」
「…俺、中三まで小学生料金で電車乗ってたし……、
まさかペンションでまで通用してたのはびっくりだったけど、まあ、おかげで安く済んだんだろ?」
「うん…、半額だった…」
聖ちゃんは俺を見上げながらニッコリ笑った。
「電車代も小学生でやってみようぜ!ついでだからとことん安く済ませよ!な?」
「…聖ちゃん…」
助かった…
意外となんでもなかったみたいだ…
実は行きの切符も子供料金にした事を俺は聖ちゃんに自慢した。
あ〜だからカード貰ったのかって聖ちゃんは納得した。
俺は調子にのって昨日夕飯の時どんだけハラハラしたか、急いでお子様ランチ食ったのかもばらした。
聖ちゃんはニコニコしながら聞いていた。
家に帰ったらプレゼント交換が待っている!荷物にならない様にプレゼントは帰ってからにしようって決めていたから。
帰ったらまたクリスマス!今日も可愛い聖ちゃんを可愛いがれると、俺の頭ん中はそれでいっぱいになった。
もうほっとして、緊張感抜けて、頭ん中は一足先に聖ちゃんの部屋にいた。
駅ビルで俺は佐伯家に土産のまんじゅうを買った。
聖ちゃんも日高達になんだかお菓子を買っていた。
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