《MUMEI》
拷問エステ
セクハラ店長は沙知の脚を丹念にマッサージした。
悔しいけど気持ちいい。
段々手が下のほうへ移動し、いきなり足の指を襲う。
「ちょっと待って!」
「なーにー?」
「足はやめて」
「くすぐったいの?」
「ええ」
「コチョコチョ」
沙知は振り向いて睨む。
「ホントにやめなさい」
「逮捕する?」
沙知は唇を結ぶと、黙ってうつ伏せになった。
「脇もダメ、足もダメ。じゃあ背中は?」
「あ、背中は平気」
セクハラ店長は背中をマッサージした。やはりプロだ。まじめにやればかなり気持ちいい。
沙知はうっとりして、力を抜いた。少し怖いけど身を任せた。
店長の手は段々と下に移動する。お尻に掛けられているタオルを掴んだので沙知は緊張した。
「タオルは取らないでよ」
「お尻は恥ずかしい?」
「当たり前でしょ」
「当店ではワガママは禁止です」
「取ったら逮捕だよ」
「そういう職権乱用するとねえ、取っちゃうよ」
「あっ」
沙知はかろうじてタオルを押さえると、睨んだ。
「本気で怒りますよ」
「冗談冗談」
沙知はまたうつ伏せになる。
「不意打ち!」
お尻をじかにマッサージ。
「あ!」
沙知は条件反射で振り向きざまに右ジャブ顔面!
「あああ!」
店長が両手で顔を押さえる姿を見て、沙知は蒼白になった。
「ごめんなさい、大丈夫?」
彼女はまず体にバスタオルをしっかり巻くと、両手で店長の顔を優しくさすった。
「大丈夫ですか?」
「死んだ」
「怪我はありませんか?」
「鼻が折れた」
「まさか」沙知は困った。
「刑事さん」
「はい」
「刑事告訴していい?」
「ちょっと待ってください」沙知は慌てた。
「暴力って犯罪でしょ?」
「あなたもいきなりお尻を触るのはよくないよ」
「あ、それって権力で庶民をねじ伏せてるの?」
「まさか」
沙知はベッドに正座すると、手をついて頭を下げた。
「本当にごめんなさい。この通りです」
「ごめんで済んだら警察はいらないんでしょ?」
「知らないわそんな標語」
低姿勢の沙知に勝ち誇るセクハラ店長。
「ただで許すわけには行かないよん」
「どうしたら許してくださいますか?」
店長は危ない笑顔。
「全身オイルマッサージを受けてくれたら許してあげる」
とんだ災難だ。しかし本当に告訴でもされたらやっかいだ。
「仰向けは許して」
「ダメー。裏表たっぷりかわいがってあげるから」
「そんな…」
乙女の危機だ。何とかしなくては、かなり恥ずかしい目に遭わされてしまう。
「お願いです店長。仰向けは許してください」
美人刑事の切なる願いに、セクハラ店長は優越感にひたった。
「わかった。じゃあ、うつ伏せになりな」
沙知は仕方なくうつ伏せに寝た。店長は彼女の両手を掴むと、タオルで縛ろうとする。
「何をするの!」
「また殴られたら大変だから、縛るのは当然でしょ?」
「縛られるのはヤダ」
「では法廷で会いましょう」
沙知は心底後悔した。しかし警察官が顔面を殴ったとなると、訴えられても文句は言えない。
「わかったわ。でも変なことはしないでよ」
密室で手足を拘束されるわけではない。沙知は逆らわずに手首を縛らせた。
「では行くよん」
いきなり脇をマッサージ。
「あああ…」
沙知はもがいた。しかしセクハラ店長は腰、脇腹と攻めまくる。
「ちょっと…」
真っ赤な顔をして耐える沙知に興奮しながら、手は足の裏を襲い、指を一本一本マッサージ。
「きゃははは。ちょっと待って、ちょっと待って!」
「ぐふふふ。いい気味!」
沙知は時間一杯たっぷりといじめられてしまった。
ベッドにぐったりする沙知を見て、セクハラ店長は勝ったと思って笑顔だ。
「沙っちゃん。また来店すると約束してくれたら許してあげるよん」
「わかった…」
(だれが来るか!)
「来なかったら…」
「脅迫?」沙知が見つめる。
「嘘嘘嘘」
最後に一矢報いた。

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