《MUMEI》

抵抗する珠季を

少し強引に

店内に連れ込んだ。

「てンめぇ‥後で覚えとけよ‥」

さっきから

ずっと──

ブツブツと文句を言い続けている彼女の隣りで

僕は

桜色のワンピースを見つめていた。

「オマエまさか‥それアタシに着さす気じゃねーだろーな‥」

「嫌かい?」

「‥アタシは‥ピンク似合わねーって」

「そのシュシュはピンクだけど?」

「オマエが選んだんじゃねーかよ」

「君が何でもいいと言ったからだろう?」

「ッ‥‥‥‥‥‥」

珠季は

サイドポニーを束ねているシュシュに手をかけて‥

でも

すぐにその手を降ろした。

「‥何でオマエに見立てらんなきゃなんねーんだか‥」

「彼氏としては──彼女にはお洒落でいて欲しいからね」

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