《MUMEI》
大晦日当日
大晦日


俺は、着替えだけ持って隣に


屋代さんの部屋に向かった。


(何か変な感じだな)


自分の部屋がすぐ近くにあるのに、他人の部屋に泊まるのは、かなり違和感があった。


(でもな)


かといって、別の所には行きたくないし


いつの間にか、俺のアパートに来た事のある高山一族メンバーは大家と仲良くなっていて


俺が屋代さんの部屋にちゃんといるか、密かに大家がチェックしている


…らしい。


(普通なら『冗談だろ?』って笑うとこだけど)


本当に有り得そうで


確認するのが怖かった。


ピンポーン


「いらっしゃい」

「お邪魔します」


(あぁ、癒されるな)


今までの経緯が経緯だけに


大人な屋代さんの態度と、暖かいこたつに、俺の顔は自然とゆるんでいた。


「あの、これ」

「ありがとう」


そして俺は、みかんと二人分のそば


忍が、屋代さん用に送ってきた日本酒を手渡した。


「何か、かえって悪かったね」


忍が選んだ日本酒は高級品だったらしく、屋代さんは遠慮がちに受け取り、俺に微笑んだ。

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