《MUMEI》



「はあ……」


俺は携帯のディスプレイを見ながら、多分100回目のため息をついた。


「はあぁ…」




−−−−−−−−
Re:
風船ちゃんと持って帰って来いよ
(;`皿´)
キャンディ喰うな!持って帰って来いよ!(`□´)┘


カッコイ〜聖より☆
−−−−−−−−





「はあ…」









「…ただいま」

「あれ〜?帰って来んの31日やなかったんか?」

「…帰省した訳やない、ちょっと寄っただけや」







びっくりした久しぶりに会うオカンを押し退け、久しぶりの自分の部屋に入る。

久しぶりにみる自分の部屋…


思わずノスタルジックな気分になるが、そんなのは一瞬で追い払って俺は押し入れを開けた。





ドタドタドタドタ…
バタンッ!


「オカン!」

「何やの!相変わらず騒がしい子やねえ!」

勢いよく扉を開けたら、

「なに人の飴食ってんねん!」
聖ちゃんのキャンディにかぶりついているオカンの姿。

「なんやのもう!
久しぶりに帰省したかと思えばペロペロキャンディと風船なんていで立ちで痛すぎてこのうえないわ!オカン悲しゅーて悲しゅーて飴ちゃんで自分慰めて…こら!返さんかい!」

俺はキャンディを取りあげ、高く腕を上げた。

「なあ!俺の郵便局の通帳知らん?」

「知らんわそんなん!このドケチ息子があ!」

オカンは俺を一睨みして、椅子にドカッと座った。


煙草をトントンしてプカリと吹いだすオカン。

俺のオカンは16歳で姉貴を産んだ、



元レディース…。


相変わらずヤンキーなメイク、服装は万年ジャージ。

高学歴の大人しいオトンがオカンと何故結婚したのか我が家の最大の謎だったりする。

今年38歳になったばかりのオカンはどう見ても20代にしか見えない。


それも我が家の七不思議かもしれない…。





「おっかしいなあ〜」
押し入れの引き出しに入れといた筈なんやけど。
必死に捜すも見当たらない。


俺は子供料金の切符を払い戻しして改めて切符を買い直した。

そう、実家の長野市までに買い替えたのだ。

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