《MUMEI》
屋代さんの愚痴
「俺末っ子だし、上がもう子持ちだから独身でも問題無いと思ってるんだけど…

ああいう具体的な話が来ると、さすがに、…キツイ」


俺が屋代さんと同じで男性の恋人がいるせいか、屋代さんの愚痴は止まらない。


「田中君もさ、言われるよ、きっと。

優秀だし」

「そんな…」


屋代さんは、今でもかっこいいし、優しいし、優秀な大人だ。


(だから、見合いが来るんだろうな)


「慎には言わないでね。他の連中にも」


俺は、無言で頷いた。


「田中君は癒し系だね。あいつらがなつくのわかる」


(さっき屋代さんに癒されたんだけどな…)


俺はその後の屋代さんの愚痴も黙って聞いた。


秀さんは絶対志穂さんを女として好きだとか


昔、厳と頼の父親の徹さんも志穂さんを本気で好きだったとか


この部屋に人を泊めたのは三人目だとか…


「あの、俺と仲村さんと…」

「徹、だけど…

あ、違う! 本当にただ泊めただけだから! あいつは俺の好みじゃないから!」


必死に説明するうちに、屋代さんの酔いは少しさめて


俺達は、除夜の鐘を聞きながら年越しそばを食べて、…気付いたら、そのままこたつで寝てしまった。

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