《MUMEI》

「あれ?」


少年にばかり目がいってしまって、バックの風景に気付くのが遅れた。

貴士は写真を隅々まで見渡す。


はやり、思い違いではない。

でも何故…?


「あの、ここって…」


訪ねようとしたら、老婆は椅子から降りると

「もう時間じゃ。」

と言って、カウンターの上にお金を置いた。


「まだ話の途中じゃないですか!!」


すると、老婆は一言


「その子を探せ。」


それだけを言うと、静かに出ていってしまった。

それと入れ代わるように、マスターが戻ってきた。


「お〜う、貴士!お疲れさん!留守番サンキューな〜!」

酔っているのか、妙に上機嫌なマスター。


時間ってこういう事か…?

「お疲れッス。」


取り敢えずご機嫌なマスターに水を出して、貴士は再度写真に目を通す。


「この子を探して、どうすりゃいいんだよ…」


何もかもが不明瞭過ぎることに、不安と同時に少しばかり苛立つ。


が、とにかく今夜は、あの屋敷に入らなければならないのは必須。


「やるしかない。」







.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫