《MUMEI》

老芸妓は溜め息をひとつついた。



『付き人…運転手…何でもやって貰うよ…。』



しゃ枯れた声で言うと、まるで悪餓鬼の頭を撫でるように、猪俣の頭をポンと叩いた。



『恩にきるよ…伯母さん…』



鬼神の目は、子供の頃を思い出したかのように、涙ぐんでいた…。




゚・:*:.。*。.:*:・゚*゚・:*:.。*。.:



菖蒲の間に、札を張る小さな音が繰り返される…。



場には手配時から「萩に猪」と「萩のカス」が忘れられたように晒されていた…。



その二枚の「萩」は、この後に訪れる大きなうねりの呼び水となろうとは――…



兼松の知る処ではなかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫