《MUMEI》

「なおえ………、あのね 」
アヅサ に会った、

と言いかけてアラタは煉獄の手で言葉を飲み込む(噛んだ、が正しいが)。

「あ、そうか 
煉獄だった。
 間違えた。」
アラタは顎が辛くなったが、彼の手を離したくないから自分の枕と頬の間に挟めた。



「名前間違えたのもだけど、さっき言いかけた言葉忘れろ。
そして今から言う言葉も忘れるんだ、いいな?」

煉獄は頷いた。




   離れないで、



   傍に居て、


眠りに就くまででいいから


……怖いんだ。」

煉獄はアラタの瞼を覆って睡眠を促した。



無機質な革の感触が仄に温かみを帯びて安心して意識を預けた。

アラタは眠る直前にあの、陽炎に飲まされた薬は睡眠薬だろうと予測した。

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