《MUMEI》

「父さんに謝らなきゃいけないことがあるの、」


「畏まってどうした?」

父さんは柔和な声色だ。


「光ちゃんと会った。」

父さんの顔色が変わった。


「……それで。」


「私は光ちゃんを嫌いになれない、光ちゃんのお母さんも。父さんは?」


「お前達を選んだ。
言い訳かもしれないがお前達を不自由にさせないためには必要だったんだ。」

父さんの結婚は会社のお偉方の推薦で、出世の為に必要不可欠だったと話す。


「じゃあ、父さんは俺達の為に光達を裏切ったって言うのかよ。勝手だな!」

茉理には理解出来ない感情なのか、苛立ちながら父さんの居るソファの向かいに座る。


「母さんは幸せだったよ……大好きな父さんが大好きな棗や茉理の父さんでいてくれたから。」

母さんが父さんを庇うと、父さんを愛してることがよく分かった。


「父さんが私達の父さんなのはよく分かってる。
ただ、私も光ちゃんも父さんの子供なんだなって思う。
光ちゃんは幸せそうに笑ってた、父さんを奪った私に微笑みかけてくれるステキな人なの。光ちゃんのママ、私を女だって言ってくれて嬉しかった……優しさが転がってるの。父さんが知らない間に本当は光ちゃんだっていっぱい言いたいことあったかもしれない。」

私にそんなそぶり見せなかったけれど。

彼は、あの日のままに綺麗だった。
私は、彼のような綺麗なものを見ていたい。
私も、茉理も、彼に夢中だった。

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