《MUMEI》
間一髪
「な、なんとか助かったな」
真っ暗な闇の中、ユウゴの声が響いた。
「だね。……間一髪」
ユキナが応える。
そう、まさに間一髪。
草野が狂った笑い声をあげたあの時、ユキナがユウゴの服を引っ張った。
見ると、彼女はすぐ近くのマンホールを指差していた。
マンホールは蓋が僅かにズレて、闇をさらけ出していた。
二人は同時に頷き、怪我をしているとは思えないほどの俊敏な動きで、闇の中へと体を滑り込ませた。
そして、ユウゴが火事場の馬鹿力を発揮させて片腕で蓋を閉めた。
その直後、頭上で爆発が起こったのだ。
ひどい地響きと轟音が少しの間続いた。
その揺れで、ユウゴはうっかり梯子から足を滑らせて落ちそうになったが、寸前でなんとか持ちこたえた。
「……上、出てみる?」
しばらく様子を窺うように耳を澄ませていた二人だったが、何も音が聞こえてこない。
しびれを切らしたのか、ユキナが言った。
ユウゴも賛成し、少しだけ蓋をずらしてみた。
真上に見えるのは、晴れ渡った夕空だけ。
烏が飛んでいる。
しかし、流れ込んでくる空気はひどく臭かった。
ユウゴは体が通れる程度に蓋を開け、頭を出した。
「……どう?」
下からユキナが様子を聞く。
「ああ、多分、大丈夫みたいだ」
答えてユウゴは地上へ出た。
そして絶句した。
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