《MUMEI》

  
「どこ行くの?」

チビが不安げな表情で俺が出かける後をついてきた。

「バイトだよ」

高校に行かなくなってからはこうやってバイトをして、少しづつではあるが貯金をして、自立が出来ればここを出るつもりだった。

「うん…がんばって…ね///」
「あ〜…」

ニッコリと笑う笑顔…が…何だよ…可愛いじゃねぇか…。

短い髪の毛で男の子のような格好なのに、その笑顔だけは上品なトコのお嬢様というような雰囲気があった。




バイトから帰ってくると、やっぱりそいつは誰とも混ざらずに部屋の隅で一人ポツンと所在なげに佇んでいた。

「…あっ///」

俺が帰ってきたのに気付いた他のチビ達が寄ってきたのを見て、そいつはまるで捨てられた子犬のような寂しそうな顔を俺に向けてきた。


「おい、お前ちゃんとメシ食ったか?」
「…うん」
「ウソだよコイツ、ちょっとしか食ってねぇぜ」

チビの一人がそいつを指さし、他の奴も服を引っ張ったりしてちょっかいを出す。

「コイツ自分で名前も言わねぇでやんの」

…おい、とか、お前とか呼ばれているのを聞いてはいたが、そういやコイツの名前を知らないな。

「名前、なんてんだ?」

ちょっかいを出された事を嫌がって俺の側まで駆け寄ってくると、チビは胸にギュッと抱きついてきた。
  

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