《MUMEI》
11
「せんせー」
「さよーならー」

大きな荷物を背負った子ども達が、ばたばたと駆けていく。

「気をつけて」

「言ーわれなくても」
「わかってるよー」

憎らしい返事の後半はほとんど聞こえなかった。

「見事な健脚」

もう既に米粒のような大きさの後ろ姿を見送ってから、ミトは校舎へ戻った。

この里に代々伝わる赤い屋根の木造校舎。外はただの平屋でも、内部は最新設備を揃えた忍の養成学校である。ここから多くの優秀な忍が輩出されている。

ミトもここの卒業生だ。
数年忍として働いた後、教師として戻ってきた。人手不足だからと頼まれ、母校に恩返しするくらいの気持ちだったが、やってみるとこれが天職であった。

1年間の臨時講師を終える時、ミトは校長に続投を願い出た。


「よいのですか」
気遣う老女に、

「オレの育てた子ども達が、一人前の忍として巣立っていく。素晴らしいことだと思いませんか」

忍も教師も、
楽な仕事ではないけれど。

そう笑ってみせた。

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