《MUMEI》

  
「武ぃ〜何か買ってぇ〜♪」

縁日の屋台通りを歩いていると、かなたが俺の手を引いておねだりをしてきた。

「んぁ…チョコバナナなんかどうだ?」
「うん!食べるぅ〜」

何かいい色と形をしたものをかなたが食べているのを見るのが面白かったし、そういう意味合いもあるという事を勘の良いはるかはそのチョコバナナを食べているかなたを見て気付いたらしい。

「なぁ、はるかぁ〜お前にも買ってやろっか♪」
「いらねぇよ///」

かなたがバナナを食べる姿をニヤニヤしながら眺めていると、ふと向こうの方に見慣れた奴らの顔があった。

「よォ!お前、守月だよな…」
「んぁ?…あぁ…お前もしかして、桃郷…だよな?」

先に話しかけてきた奴は、中学の時の同級生で一緒に連んでいた桃郷達だと思う。

連中はしばらく俺を睨んだ後、やっと分かったというように驚いた顔をしていた。

そりゃそうだよな、中学の時の俺はここまで髪も長く無かったし、それよりもっと目つきも悪かったかもしれない。

俺がこんな場違いな学校に入ったのも、親父が自分の元から離す為だった。

この”全寮制”のイイトコの高校でかなた達に出会ってからというもの、教師に疎まれながらも俺もずいぶん丸くなってしまったんだろう。

それに俺だけじゃなくコイツも、アゴにヒゲなんか生やしやがって…他の奴らも中学の頃より体格も良くなったような気がした。

「お前も変わったじゃん、桃郷」
「お前も変わったなァ〜…あれ、お前ベビーシッターでもしてんのか?」

奴らは俺の隣に居た双子を見るなりそう言って、誰かがはるかの頭を撫でようとしたらはるかはそいつの手を払いのけた。

「何だよコイツ、小っせえのに威勢がいいな〜」
「小っさいとか余計だ!」

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