《MUMEI》

(もしかしたら…コレで彼女が探せるかも…)


日本に来た目的はあのミステリアスな彼女を探す為だったから。

それにショーに来るという事はファッション関係の人物に違いないと思って、とりあえず目に付いたファッション誌全部を買い込むと、予約してあったホテルにチェックインして全てのアドレスを調べ上げようとベッドの上に広げてみた。

広げた雑誌からアドレスを調べる途中、何度もその日本のファッション誌の中身を見て、この国は私達とは全く違っている事に驚かされた。

ページを捲る度、自分が今まで持っていた価値観を全てひっくり返されるようで、それが面白くて時間の過ぎるのも忘れてずっとその雑誌を眺めていた。





「…Oh man !(しまった)」

夢中になって気付いたら夜も明けて、窓の外はうっすらと明るくなっていた。

でも頭は新しい情報を入れた事で、まるで初めての青春の頃のようにキラキラと頭の中が輝いて興奮しっぱなしだった。




ホテルをチェックアウトすると、とりあえず雑誌にあったアドレスをリストアップして、手当たり次第に電話をかけた。


分かるのは女性で”サクラ”という名前のみ。


日本語は挨拶程度しか喋れないので僕の名前と英語で問い合わせると、最初は電話の向こうで慌てる様子もあったが一通り聞き出す事は出来た。



”サクラ”という名前はファーストネームでもファミリーネームでもあるので沢山居るという事。

そのショーが開催されていた期間にその国に行っていた”サクラ”は他にも居るという事。

それを聞いた辺りで探すのを諦めようとした所、フリーランスのライターに”サクラ”が居ると言ってきた。

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