《MUMEI》

(……あぁ、そっか)

フリーランスなら、ステージ周りのプレス席に居なかったのも、その後のパーティーに姿を表さなかったのも頷ける。

その何社目か分からない電話の向こうの親切な彼女にお礼を言うと、その人の連絡先を聞いて受話器を置いた。


(でもこの住所って、ドコだろう…)

電話口で聞いてみたものの、音だけだし。

日本の地図に書いてある複雑な文字のようなものも分からないし、ましてやこんな広い都市…。


とりあえずその辺を歩いていた可愛い女の子に声をかけて、メモを見せて覚えたての拙い日本語で聞いてみたら、メモのアルファベットを丁寧に複雑な文字に直してくれたけど…更に分からなくなってしまった。

書かれたものは文字のような絵のような見たこともないもので、どの方向から見たらいいものかもよく分からなかった。


日本語を少しくらい勉強してくれば良かった…と、後悔しながら道ばたに座り込むとお腹が減っている事に気が付いた。


(そういえば、コレ…)


ついさっき何でも売ってる便利な店で可愛い子が買ってるのを見て同じく買ってみた、黒くて変だけどおもしろそうな食べ物を食べてみる事にした。

その黒いモノからはイタリアで食べた海草のような香りがして、中にはライスを固めたものと塩辛いものが入っていた。

バゲットのように手も汚れないし、色々な味が楽しめるこんなにコンパクトにまとまっている不思議な食べ物は食べた事が無かったので、また何でも屋に入ってその面白い食べ物を何個も買ってしまった。

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