《MUMEI》
モテぶり
いずれにしろ、柊は人気があった。


幼稚園のころ、おなじ組だった子から、無理やりほっぺにチューされていた。

小学生のときは、クラスの女の子たちから、頼んでもいないのに、給食のデザートをもらっていた。

中学になると、おなじ学年の女子だけじゃなく後輩の子からも、コクられていた。

わたしがめでたく彼女の座に落ち着いた、高校になっても、誕生日やバレンタインデーには、たくさんのプレゼントを受け取っていた。


だれにでも、必ずやってくるといわれている『モテ期』。
それが、《3回やってくる》と最初に言ったやつはどこの馬鹿なのか、とわたしはおもった。


わたしは彼のとなりで、その柊のモテぶりぜんぶを目の当たりにしながら、たまげていた。とにかくひっきりなしなのだ。


モテモテの彼氏を横目に、ごく平凡なわたしが、気が気じゃなかったのは、言うまでもない…。





「…下駄箱にチョコを入れるひとの考えが、俺にはわからないね」

柊は下駄箱の扉を開くなり、ぼやいた。わたしは、彼の顔を見あげる。
黒い、セルフレームの眼鏡レンズの奥にある瞳が、すこし疲れて見えた。

「かるい嫌がらせだよね。ニオイがうったら、どうするんだって話だよ」

下駄箱からひとつ、かわいくラッピングされたチョコレートを手にとり、ため息をついた。
彼の、逆の手には、おおきい紙袋が−−チョコレートの箱がたくさん入った袋が、すでにぶら下がっていた。

たくさんの女子たちから、教室でもらったものだ。たぶん、ほとんどが、本命チョコなんだろう。確認はしていないが、そんな、きがする。

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