《MUMEI》 皐月 中旬しと、しと、雨が降り止まない。 不安なとき先生は、ぼくの手を取ってくれた。 ぼくは時々、女性の呻き声を土の底から聞いた。 彼女は先生を愛していらっしゃる。 土の下から詩が聞こえて、土の被さる音がして、そうやって埋めたのだと、繰り返し囁かれる。 「先生……ぼく、聞こえてしまったんです。」 「嗚呼、艶子の声?」 先生はお酒を呑んでいた。 違う、と謂えない。 先生は虚ろな眼差しでぼくに微笑む。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |