《MUMEI》

…ジャリッ…ジャリッ…



リーダー格とおぼしき男が玉砂利の地面を踏みしめて、白シャツの男に歩み寄ってゆく。



その男が煙草をくわえると、側にいた若い組員がサッと火を付けた。



ツゥ…っと煙草を深く吸い込み、煙を白シャツの男に吹きかける。



『早く自由になりてぇよな?


実松さえ見付かれば、手前は放免だ…


あとちょっと辛抱してくれ…。』



だが、その優しげな言葉に労いの意味など込められていないことは、白シャツの男は分かっていた。

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