《MUMEI》
抜け出せない
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病院の近くのコンビニは、お昼どきということもあって、すこし賑わっていた。

わたしは、コンビニの入口から、ガラス越しに店内を覗きこむ。

中には、白衣をまとっている病院関係者や、ビジネスマン、そして子供づれの主婦など、様々なひとたちがひしめきあっていた。

わたしがガラスに張りつくようにして、店内を見つめていると、後ろからお母さんがあきれた声で、まるで不審者よ、と毒づいた。わたしは、聞こえないフリをした。お母さんの、深いため息が聞こえた。

「あんたは、なにがしたいのよ…」

そうこうするうちに、店の中にいた店員がわたしたちの姿に気づいて、外まで出てきた。どうやら、車椅子にのっているわたしが中に入れず、立ち往生しているとおもったようだ。

店員はドアを支えて、どうぞ、と呟いた。
お母さんは店員に会釈をして、車椅子を押し、わたしと一緒に店内へ入ろうとする。


それを、わたしは止めた。お母さんは怪訝そうな顔をしていた。


わたしはお母さんにはなにも言わず、店員を見あげて、尋ねた。


「柊は、いますか?」


今日、このコンビニに立ちよったのは、ほかでもなく、柊に会うためだった。

わたしにあの事故の日のことを、告白してから、柊はわたしの家に来なくなった。


彼は、罪の意識にさいまれていた。


わたしは、この前の柊との会話を、おもい出す。




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