《MUMEI》
年始挨拶
忍は俺にキスした理由を、『お前が余計な事を言おうとしたからだ』と、言った。


確かに、勘のいい大さんに、俺の言いたかったセリフを聞かれるのはまずい。


(忍が春日グループで仕事してるのは知られてるけど…)


さすがに、春日家の当主の執事とは気付いていないだろう。


もし、気付かれれば


そんな肩書きの忍が養っている俺の事まで…


(そりゃ、前当主の愛人とは思わないだろうけどさ)


「堂々としていろ」


ため息をついた俺の背中を忍が叩いた。


そして、忍は当たり障りなく、果穂さんを始めとする高山一族に挨拶していた。


俺は、隣で忍が背中を叩く度に、頭を下げた。


そして、忍は大人組の中に自然に溶け込み


俺は、子供組の中に入った。


「すごいわね、忍さん。祐希より、馴染んでる」


志貴がそう言った通り、屋代さんは未だに緊張で固まっていた。


俺は、苦笑し、志貴に挨拶した後


柊・祐・希先輩に挨拶した。


「あれ? 厳は?」


俺が周囲を見回しても、厳の姿は見えなかった。


厳が会場に


高山本家の広い居間に現れたのは、それからしばらくしてからだった。

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