《MUMEI》
最悪のバースデー
「お疲れ様でしたぁ。」

コンビニでのバイトを終えた加奈子は、そそくさと着替えを済ませると家路を急いだ。
「フフッ。楽しみ。」

今日は加奈子の誕生日だ。高校卒業後、大学に通うため単身、東京に出てきて早一年。
東京で迎える初めての誕生日に、彼氏が手料理を食べさせてくれる事になっていた。

「早く帰って部屋、綺麗にしとかなくっちゃね!」

ウキウキしながら足早で歩いていると、突然携帯が鳴り出した。
「誰よ〜、急いでんのにぃ!………あ!!」
ゴソゴソと鞄をあさり、携帯を手にすると、彼氏の名前が映し出されていた。

「もしも〜し!シュンちゃん?どうしたの?もしかして、もう家着いちゃった?」
加奈子はテンションの高い声で電話にでた。もう頭の中はラブラブモード全開になっている。

「加奈子…悪い!」
「え?」

電話の向こうで謝る声は、やけに切羽詰まっている。それになんだか息が荒い。嫌な予感がする。

「どうしたの?悪いってどういう事?」
「今日のパーティー無しにしてくんないかな…」
「え!?なんで…っ!」

やはり的中してしまった。
「ちょっと…仕事でトラブッちゃって…ゴメンッ!」
「そんなぁ…。」
加奈子は今にも泣き出しそうな声を出した。

「ほんとゴメンッ!!この埋め合わせは絶対するから!じゃ!」
「あ!え?シュウちゃん!?」

―ツーツーツー…―

一方的に電話を切られた加奈子は一気に意気消沈してしまった。

「仕事、仕事って…今日は私の誕生日なのに…」

ボゥっと光る携帯の画面が滲んだ。

「最悪…」

ポツポツと雨が降り始めていた。

「泣きたいのはコッチだよ」

真っ暗な空を見上げるた加奈子は呟くと、またも家路を急ぎ出した。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫