《MUMEI》
「紗枝結構酒強え〜なあ」
「そんな事ないよ〜、だってもうフラフラ〜、一人で帰る自信ないし〜」
アタシはそう言いながら裕斗の肩に頭を乗せる。
「それは心配すんなよ、ちゃんと送ってくし」
−−よし!
▽
タクシーでアタシのマンションに向かう中、アタシは眠い振りをして裕斗に寄りかかっていた。
剥きだしの裕斗の腕に、柔らかいアタシの胸を押し付けながら。
▽
裕斗は会計を済ませるとアタシを揺り動かした。
「…う〜ん、眠いよ〜」
「仕方ねーなあ、おんぶしてやっからとりあえず降りな?」
「は〜い」
アタシはわざとモタモタしながらタクシーから降り、タクシーが去って行くと
「ほら!」
アタシに背中を向けてしゃがみ込む裕斗。
「……」
なんか…
襟足…色っぽい…
「ほら!」
「あ、はい!」
そっと抱き着くと
「よいしょ…っと」
アタシを軽々持ち上げ、エントランスを進み出す。
ぁあ…良い匂い。
逞しくないけど落ちつく背中…。
▽
裕斗はそっとベッドに座った。
「手離して良いよ?」
「…やだ、あったかいから離れたくない〜っ!」
「もう酒癖悪りいなあ〜!わかったからとりあえず離れなさい」
「は〜い」
するりと腕を解くと裕斗はアタシの方に顔を向けた。
「紗枝…俺さ…」
「はい…」
真剣な表情の裕斗……
ふふっ
私に…
堕ちた…
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