《MUMEI》
迷う厳
「ところで、厳は決めたの?」


志貴の言葉に、厳はビクリと震えた。


「…まだなんだ」


祐がからかうように言う。


「一途な人間が多い中で、珍しいよね」


珍しく、柊も便乗した。


「まぁ、二人とも可愛いし、二人ともいい子だし…」

「わかってく…」

「端から見てると二股だけど」


グサッ


(うわぁ…)


希先輩の一言が一番きつかった。


(多分、屋代さんの事があるんだろうな)


希先輩の初恋の屋代さんは、希先輩の父親の仲村さんの恋人で


仲村さんは、妻の志穂さんと、屋代さんのどちらも愛している。


一応納得はしているが、やはり希先輩は二股を許せないのだろう。


(まぁ、普通はそうだよな)

そんな事を考えていると


「…希の父親、二股じゃん」


厳が、地雷を踏んだ。


小声だったが、その声に、全員が反応し


厳は、元旦からいいところが全く無かった。


(…馬鹿だな)


そんな厳を、来年三月まで見守らなくてはいけない俺は


大きくため息をついた。


(…多分、ギリギリまで選べないだろうしな)

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