《MUMEI》

「『引っ越して行っちゃった』‥?」

「そう。何か──事情があったみたいで」

「好き、って──言わなかったの?」





訊いたら、

佳代子さんは苦笑した。





「なかなか──声かけにくくて。引っ込み事案で人見知りだったし」

「───────」

「後悔したわ──。手紙でもいいから渡しとけば良かった、って──」

「あれから‥会ってないの‥?」

「ええ、もう10年近く──」

「‥会いたい‥?」

「そうね──会いたい」





悲しそうに、

でも懐かしそうに──

佳代子さんは呟いた。

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