《MUMEI》
血痕
「もうビショ濡れだぁ…」
さっきまで小降りだった雨は、加奈子がアパートに着くまでに大降りになっていた。
「早く着替えなきゃ。……ん?」
アパートの前にある外灯で、薄明るく照らされた地面に妙なシミを見つけた。
「何…コレ…。」
ハッキリとは見えないが、目に写ったソレは確かに赤黒く、鈍い光りを反射していた。
「う、嘘…。コレって血、だよね…?」
点々と続くそのシミは加奈子の住むアパートに向かっている。
「野良猫か何かのモノ‥だよね?まさか人間な訳…。」
そんな訳無いと自分に言い聞かせながらも、恐る恐るその後を着いていく。
雨は更に勢いを増す。
―カツ、カツ、カツ…―
一段一段、ゆっくりと階段を上がっていく。
「何でこんなとこまで…。もしかしてここの住民の誰か?」
―カツ、カツ、カツ、カ…―
加奈子は自分の部屋の扉が見えて足を止めた。
全身の血がサーッと引いていくのがわかった。
「ヒィッ!!う…そ……。」
目の前に現れた異様な光景。
僅かに鼻をかすめるリアルな血の生臭い臭い。
「助、け……て…ハァ‥ハァ」
虚ろな目で加奈子を見上げる男が一人、血まみれの腹を押さえてうずくまっていた。
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