《MUMEI》 おもいで. 高校を卒業すると、わたしは短大に、柊は大学に、それぞれの進路へすすんだ。 わたしたちにとって、生まれて初めての別々の学校生活が、始まったのだった。 不安はもちろんあったけれど、わたしと柊なら、上手くやっていけるとおもった。 実際、1年過ごしたけれど、別に普段と変わらず、仲良くやっていたし、会おうとおもえば、いつでも会える距離にいたから。 ……上手くいかなかったのは、潤との方だった。 今までも、ケンカはたくさんしていたが、 以前とは、すこし様子が違うな、と漠然とだが、そう、おもった。 なんだか、急に怒りっぽくなった気がした。 潤と一緒にいるとき、わたしが柊と電話を始めると、たちまち不機嫌そうに眉をつりあげ、どこかへ行ってしまったり、 わたしが柊とデートしたときの話をすると、「つまらない」と感じ悪く言い捨てたりした。 それが、なぜなのか、わたしはわからなかった。 思春期の、ムズカシイ年頃だからかな…と簡単に考えていた。 そんなある日−−−。 その日はめずらしく、潤の機嫌がよくて、彼は学校帰りに、わざわざわたしの家にやって来た。 何の用かとおもったら、学校でおこなうバスケの試合を見に来てほしい、とのことだった。 「兄さんより、すごいプレーをたくさんするから、絶対来てよ」 得意そうにそう言った潤が、とてもかわいらしく、愛おしかった。わたしには弟はいないけれど、きっとこんな感じなんだろう。 前へ |次へ |
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