《MUMEI》 ――… カラ カランッ …… グラスの中の氷が、心地よい音を立てて揺れる…。 A常務「呑まないと、神経が参ってしまいそうでね…。」 アンパンマンは苦々しく呟いて、煙草を灰皿に押し付けると、琥珀色したグラスを傾けた…。 氷が溶けだす前の、殆どストレートに近いスコティッシュ・ウイスキーが、アンパンマンの咽をゴクリと鳴らす…。 ママは細い指先で、水割りに刺したマドラーを回していた…。 ママ「珍しいわね…? 貴方がそんな弱音を吐くなんて…。」 それは、アンパンマンのささやかな泣き事に付き合うために用意した、自分のグラスだった。 前へ |次へ |
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