《MUMEI》
夢のつづき
.





あれから月日は流れて−−−。


何度目かの、梅雨があけ、


わたしは、潤に車椅子を押してもらい、柊の墓前へとやって来た。


今日で、7回目の、命日だった。




わたしは、お墓のまえで目を伏せ、静かに手をあわせる。そのかたわらで、潤が、しゃがみこんだ。

「兄さん、元気かな…」

わたしは顔をあげ、ぽつんと呟いた潤の顔を見て、ほほ笑んだ。

「元気だよ、きっと。むこうでも、女の子に囲まれてるでしょう」

わたしの言葉に、潤は儚く笑い、そっか…と呟き、目の前のお墓を見上げた。わたしも、その視線をおう。




−−−柊、

わたしたちは、元気だよ。

いっぱい、心配かけたよね。


でも、もう大丈夫だと、おもうんだ。


わたしたちは、ようやく、あの夜から、

抜け出せたから−−−。







わたしは空を見あげた。

はてしなくつづく、この青は、
きっと、あのひとのところまでつづいている。


わたしは、あの雨の交差点から歩きはじめた。

夢のつづきは、もう、見ない。








−FIN−

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