《MUMEI》

「似てない?なづきと金谷君の色。
色というか、描いているときの雰囲気。」
佳代が宿題を出された範囲の解答を渡してくれた。


「雰囲気?」
なづきは眉に皺を寄せた。
ルナは調度席を立っていた。

「なにそんな不細工顔してんのよ」
佳代はなづきの頬をつねる。

「元からだもん。」
つねられたまま話す。

「ぶっ、なにそれ…」
そしてルナの最悪のタイミングでご帰還。
本気で笑うのをそっぽを向いて堪えている。
恰好つけているのか。

いつもの彼の勢いなら頬をつねるのに参加するか、嘲笑うだろう。

「すかしやがって!」
皮肉を込めて言ってやる。

「なづきどした?らしくないぞー?」

「私らしいって何?
勝手に私のデータとらないで!」
つい、頭に血が上り佳代に乱暴な言葉を吐く。
後悔先に立たず、である。

「………ごめん」
ルナが佳代に向かって詫びた。なづきの頭を一緒に片手で下げる。



「だろう?」
ルナはなづきへ歯を見せて笑った。



「…………………ん。

ごめん佳代言い過ぎた。」
もう一度なづきは佳代に頭を下げた。
悔しいけれどあのタイミングで入られたから、素直に謝ることが出来たのだ。

悔しいけれど、事実だ。





なづきは下からルナの横顔を盗み見た。
窓からのシャープな光線が彼の実体を描写している。
瞬きの1コマを見た。


(この黒目で見透かされた?)


気付かれないように更に深く頭を下げた。

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