《MUMEI》 新たな台本「すみません、部長。来年度の文化祭の台本についてなんですが…」 「…俺?」 俺が自分を指差すと、坂井が頷いた。 (確かに、俺、部長になっちゃったけど…) 「専門的な意見は言えないぞ?」 前部長のように、台本チェックは出来ないから、それは顧問の相田先生に頼む事にしていた。 「わかってます。部長にしか訊けない事ですから」 そう言って坂井は、ノートを俺に手渡した。 「どの女装ならやってもらえます?」 そう、付け加えて。 「…は?」 「部長、主役ですから」 「普通に女子がやれば?」 「部長ほど華がありません」 「さすがに、女役はちょっと…」 一年の時は可愛い男役で、二年の時も女装しているが一応男役だった。 「どれも違和感無いと思いますが」 「いや、でも…」 (このままじゃ流される) そう、諦めかけた時 「どうした? 祐也」 頼が後ろから抱きつくように、よりかかってきた。 「発声練習は?」 「終わったよ。今は皆自主トレ中。で、何困ってんの?」 「とりあえず離れろ」 頼が離れた時点で、俺は説明を始めた。 前へ |次へ |
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